相田みつをさんの書いた物の中で似たお話しを見つけました。
相田みつをさんが最も尊敬する画家という、原田平治郎さんのお話しです。
その原田さんが子どもを連れて鱒釣りに行った時のことだそうです。
その鱒釣り場では、釣った最後に鱒の数を数えて、一匹につき100円だかを支払うシステムだったそうです。
つまり、もし10匹釣れば1.000円払うわけです。
そこで原田さんは、なるべく大きな鱒を釣ろうと、小さな鱒がかかると糸を緩めて逃がすようにしていたそうです。
それを見た原田さんの子どもが言ったそうです。
「やめて、お父さん。それじゃあ釣り場の人が損しちゃうじゃない!」
何て立派な子どもなのでしょうか…
自分の(得の)ことではなくて、相手のことを考える…
こんなひとがひとりでも多くなれば、世の中は間違いなく良くなります。
実は、相田みつをさんがここで指摘しているのは、そういう子どもに育てた親が立派であるということなのです。
実はこのお話しにはその前のお話しがあります。
自分の子どもが万引きで捕まり、警察に行ったあるお父さんの実話だそうです。
万引きは数人で行われたそうですが、一番トロいその子だけが捕まってしまったそうです。
父親は子どもに会うなり、「俺が悪かった。お前をそんなことをするように育ててしまった父ちゃんが悪かった。俺一人の責任だ。他の誰も悪くない」と言ったそうです。
普通なら、「何てことをする息子だ!」とか、「周りの悪友が悪い!」とかになりそうです。
そこで息子は感動してしまったそうです。
ホントはもっと長いお話しですが、だいぶはしょりました。
何か悪いことが起きると、私も含めて多くの人はそれを自分以外の何か周りのせいにします。
言い訳、弁解が出てきます。
ところが実際には、悪いのは自分であることがほとんどです。
何か悪いことが起きた時に、心の奥底深〜いところに聞いてみます。
「誰が悪い?」と。
そうすると、聞こえて来る声があります。
「自分が悪い…」
これが出来ると、前述の子どもや、このお父さんのようにかなりの「人物」だと思います。
前述の鱒釣りのお話しは、ビジネスマンにとってはとても深く考えさせられるお話しです。
値上げをして利幅を増やせば、売る方である自分、自社はその分潤います。
ところが、買う方は逆に損をしてしまいます。
競争が激しいところではそうもいきませんが、競争が少なければ可能です。
どれだけの利益を乗せるのが妥当なのか…
たくさんの利益を出している優良会社などは、競争が少ないところで勝負をしていますから、タップリと利益を乗せています。
そういう会社の値段が高いことは周りにも知られています。
もう少し利幅を減らして値段を安くすればと思うのですが、当事者にとってはそうも簡単にいかない問題です。
いつそのビジネスが傾くかが分からないという心配もあるでしょう。
私も以前、幸い偶然にも業界でオンリーワンの製品を開発、販売することが出来ました。
競合がいないので、どんな価格が妥当なのかも分かりませんでした。
そこで十分な利益を乗せて販売しました。
何十万個と売れたので、凄い売上と利益になりました。
十分な利益を乗せたのは、自分が心配性であることも関係していると思います。
「利益を得られるこんなチャンスは他に滅多にない!」
最終的には、製造パートナーが作り過ぎてしまい、それを処分せざるを得なかったので、売り上げの割には利益はかなり少なくなりました。
さらには暫くすると競合が現れて、弱小であるうちの製品は100%のシェアからどんどん落ちて、最後にはビジネスにさえならなくなりました。
その後に知ったのが、渋沢栄一の「論語と算盤」でした。