知り合いのイラク人がビザの問題で困っています。
お父さんもお兄さんも外交官という良いお家柄で、本人は飛行機のエンジニアです。
ジャンボジェット機より大きい、あのA380の一部、部品を設計したことがあるそうです。
今回彼はハンブルグにあるエアバス社に雇用も決まっていました。
でもビザがおりません。エアバス社も、費用と時間の点でかなりサポートしてくれたそうですが、なかなかビザが下りないのでついに諦めてしまったそうです。
外人局がデュッセルドルフに住むことしか許さないのでそのお話はご破算になってしまったのです。
彼と知り合ったのは、そういったビザのトラブルで、彼が住む所を探していた時のご縁でした。
彼は一応難民のくくりの中に組み込まれてしまうようで、難民用の住居に住めるのですが、お金に困っているわけではないので、その頃丁度うちの二階に住んでくれる人を探した時にその候補者になりました。
でもその後ハンブルグの方での仕事の話しが進みそうになり、結果的には同じ屋根の下に住むことにはなりませんでした。
ところがその後、デュッセルドルフの外人局が、彼にハンブルグ行きを許さなかったのです。
彼は一応難民のくくりには入っているそうですが、難民に対する援助金は受けていないそうです。
それどころか本来なら仕事をしていてドイツで税金を納める立場にいると憤慨しています。
彼がうちの二階に住む候補になった時のことです。
出身がどこの国かということが、その人の人生に大きく影響することが良く分かりました。
彼が見学に来た時、こちらはいつもの普通の見学のつもりでいたのですが、彼にしてみると、彼が自分の身分をこちらに証明しに来た様であることが分かりました。
写真なども含めた分厚い書類を持って来てくれたのですが、それらは彼がいかにテロなどとは関係ない善良なるイラク市民であるかというものでした。
お父さんやお兄さんが外交官であることや、海外の先進国の多くの人たちと付き合いがあることを示す写真や書類、彼が本当にエンジニアであることを示すことなど、彼自身に関する写真や書類の数々。
ファイル一冊分はありました。
そんなこととはつゆ知らず、こちらは普通に世間話をしたつもりだったのですが、後で気が付いたのは、「そうか~、大家さんが例えば普通のドイツ人の場合は、あれらの資料でいかに自分が善良な市民であるかということを証明しないと部屋を貸してもらえないんだ…」ということです。
確かに、さすがの日本人でさえドイツでアパートを借りるのには苦労しています。
ドイツ人の大家さんは普通、日本(人)のことを良く知っていたり、今まで借主が日本人だったりしない限り、まずはドイツ人を優先します。
貸し手市場のドイツの賃貸物件市場では、外国人はまず最初のセレクトで落とされてしまいます。
実は彼、変な疑いをかけられて拷問収容所にも入れられたことがあるそうです。
次のユーチューブサイトでは、そんな彼の波乱万丈な人生の一部分が説明されています(RT Deutschでのインタビュー/ドイツ語)。
川崎
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