Van Hool というベルギーのバスメーカーをご存知でしょうか?
知らない人がほとんどだと思いますが、バスの業界では有力大手です。
ドイツではドイツのMan 社製やスウェーデンのScania 社製のバスはよく見ますが、そのScania 社のバスもOEMで作るのがVan Hool 社です。写真のドイツ向けPostbus がそれです。
エンジンは作っていないものの、車体製作には強いようで、エンジンも作っている Scania のバスもOEMで作っているのです。
ヨーロッパでは唯一、特殊車両であるダブル連節バス、つまり三つのバスの車体が二ヶ所のアコーディオン型連節部分で繋がれたバスを作っています。
二つのバスの車体が一ヶ所のアコーディオン型連節部分で繋がれたバスはドイツでもよく見かけますが、
三つのバスの車体が二ヶ所のアコーディオン型連節部分で繋がれたバスはあまり見かけません。でも例えばハンブルグでは走っています。
Van Hool 社では路線バスや観光バス以外にも、ダブルデッカー(2階建てバス) やスーパーハイデッカー(客室の床を通常より高い位置に配置した全高3.6m以上のバス)、空港用バスなども作っています。
日本には「いすゞ自動車」「日野自動車」「三菱ふそうトラック・バス」の3つのバスメーカーがありますが、ヨーロッパには Alexander Dennis(イギリス)、Ayats(スペイン)、Barbi(イタリア)、Beulas(スペイン)、BMC(トルコ)、Cobus(ドイツ)、Evobus(ドイツ)、Hess(スイス)、Heuliez(フランス)、Hispano(スペイン)、Irisbus(フランス)、Irizar(スペイン)、Iveco(イタリア)、Karosa(チェコ)、Kutsenits(オーストリア)、Man(ドイツ)、Neoplan(ドイツ)、Optare(イギリス)、Salvador Caetano(イギリス)、Scania(スウェーデン)、Setra(ドイツ)、Sitcar(イタリア)、Skoda(チェコ)、Solaris(ポーランド)、Temsa(トルコ)、VDL Berkhof(オランダ)、VDL Bova(オランダ)、VDL Jonckheere(ベルギー)、VDL Kusters(オランダ)、Volvo(スウェーデン)、Wrightbus(イギリス) などがあります。(出典元: http://www.geocities.jp/khsr21/pc112.html)
今回訪問したのは Van Hool 社の売り上げの65%を占めるバス製造部門ではなく、残りの35%を占めるタンクローリーのタンク部分の製造部門です。
日本からの訪問ということで、日本の国旗が正面玄関に挙げられていたので、訪問側としてはやはり嬉しいものです。
まさかそれを右翼という人もいないでしょう(笑)。
オフィスの中はドイツのように1人〜2、3人の個室に分けられているのではなく、日本のような「ワイガヤ」会議室方式で意外でした。
オフィースの一角に工程管理室がありましたが、全ての製品の出来具合がそこで管理され、目を見張るような大きなモニターの工程管理表は圧巻です。
さらに驚いたのはオフィースのWC で、画期的な高価掃除機であるDyson 社のドライヤー付き蛇口がありました。蛇口が大きく飛び出し過ぎていて、実際には使いにくいでしたが…
今回Van Hool 社に特殊タンクの注文を入れたのは、臭素の製造運用の大手で業界では有名な会社です。
臭素という劇薬を運ぶだけに、そのタンクの出来具合は120% 完璧にしておきたいものですが、製造工程ではどうしても不具合と成り得る小さな処理不足と疑われる点が見つかります。
ドイツ側ではそれでもOK なようですが、日本側ではそれを許しません。それらの点をチェックするのが今回の出張の目的です。
タンクひとつの値段はポルシェ並み。例えば右の写真にある部品は一部がレアアースでできていて、これひとつで100万円です。
このタンクの内側には、劇物を運べるように特殊な鉛加工が施されています。鉛というのは釣りの時のオモリに使うとても柔らかい金属ですが、それが劇物や放射能をさえも遮断してしまう興味深い金属です。
鉛を加工するにはバーナーの火を使います。鉛はバーナーの火で簡単に解けるので、家庭のキッチンなどでも加工ができますが、それを工業用に使うとなると熟練した職人の腕が必要です。
その加工を頭上で行える職人さんはいわゆる名匠ですが、写真の彼はKrefeld にあるRöhr + Stolberg という鉛加工専門業社にいる4人の名匠の内の1人です。
鉛の加工を頭上で行えるというのはどういうことかというと、バーナーの火を鉛に当てると液化しますので、それを頭上で行えば溶けた熱い鉛が垂れて自分の顔に落ちて来てしまいますが、それが落ちないように上手く加工できることです。
タンクで劇物を運べるように内側に鉛加工を施せる会社は実は世界にたったの4社しかありません。アメリカとイスラエルに1社ずつ、そしてドイツに2社です。
そしてその名匠レベルの職人が各社に数人いるわけですが、そういうレベルの鉛加工の名匠は日本には1人しかいないそうです。
さすがドイツ。
世界に4社しかない専門業社の半分を占めています。鉛は放射能さえも遮る金属であることから、Röhr + Stolberg 社では病院のレントゲン室の特殊な壁なども作っています。
Röhr + Stolberg 社先日あのチェルノブイリに放射能を遮る特殊な壁を作って出荷したと聞いたので、それなら福島や50基以上ある日本の原発に役立たないだろうかとJETROさんにお話したところ、面白そうだということで早速ミーティングが持たれたようです。
日本に存在しないドイツの鉛加工専門業社がもし日本で活躍できたら、それほど嬉しいことはありません。
川崎英一郎
いえ、通訳です。
機械、技術関係も得意なので。
上に大きいダブルデッカーならまだしも、前後に長いダブル連節バスなんて日本では絶対に走れませんね…笑。
日本にそれを輸出する仕事をされているのですか?
かっこいいバスですね、でも雪で道幅が極端に狭くなってしまう北海道では
国道以外は走れなさそう・・・・。やはり東京以南かな。