憲法改正の是非を言うのは中身を知ってから

さて、憲法改正案に具体的に何が書かれているのか、実質的に何が変わる可能性があるのか、詳しく見ていきましょう。

話題になるのはもっぱら9条についてですが、実際には自民党による憲法草案の特に重要な問題点として多くの専門家が以下を指摘しています。

1 立憲主義の否定

2 基本的人権の制約

3 表現の自由の制約

4 平和主義からの離脱

5 緊急事態の時に首相に強大な権力が集中

 

そんなことあるわけないじゃん!それはでたらめでしょう、と思いますよね。

それが大事です。でも、根拠のない否定は何も考えずに根も葉もない噂を信じるのと同じこと。

中身を知らずに賛成、反対と言うほどおかしなことはありません。

ウイルス駆除のソフトウェアをダウンロードしたらウイルスが入ってた、、、みたいに毒まんじゅうの可能性も疑わないと。

くどいようですが、そもそも憲法は権力者が権力を乱用しないように縛り、人権を守るものです。

どちらの情報も鵜呑みにせず、両方の意見を調べてみた上でじっくり自分で判断するのが本当の姿ではないでしょうか。

専門家の見解を見ていきます。


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8月30日 18時開場、18時半上映開始 上映時間2時間2分 デュッセルドルフ BlackBoxにて

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憲法改正についての詳しい解説はこちら(難しめ)

自民党憲法草案の条文解説

専門家による真面目な解説です。

改憲草案とQ&Aを踏まえて解説しています。

以下重要項目のみ抜粋します。

 

前文

現行前文にはなかった基本的人権の尊重の語が加えられ,平和主義、国民主権、基本的人権の尊重の三原則が維持されていることが明確になったかのように見えますが,基本的人権を尊重するのは国ではなく「日本国民」になっています。平和的生存権の根拠とされる「平和のうちに生存する権利」もなくなりました

また、国民が国を守ること、和を尊ぶこと、規律を重んじること、国家を継承することなどが新たに掲げられています。国民の憲法尊重義務(102条1項。Q&Aによれば「遵守」より重い義務)が新設されたため、これらは国民が守らなければならない事項となります。

自民党憲法草案の条文解説より

 

感想: 憲法をもとに個別の法律がつくられるので、「和を尊ぶ法」「規律を重んじる法」などの名目で悪用されたりしない?「和を乱す」から、となんでもかんでも禁じられたり・・・

美しい文言は毒を含むことがある。「正義」の名のもとに戦争が行われ、「文明化」の大義のもとに侵略、植民地化が行われ・・・

もちろん「和を尊ぶ」こと自体を否定しているのではないですよ。こういう誰もが素晴らしい、と思うフレーズは逆に危険性も秘めているのも確か。

 

第二章 戦争の放棄 → 安全保障に変更

9条 (平和主義)

国防軍について、9条の2で法律によって内容を決められます
9条の2第3項で公の秩序を維持する活動が憲法上可能となり、国内の表現規制等の治安維持活動を国防軍が行うことになります。

9条の3「国民と協力して」は国民が国防しなければならないことを前提とした規定になっています(総論、前文3項、25条の2、102条1項参照)。明確に国民の義務という文言になっていない点につき、Q&Aは「徴兵制について問われることになるので、憲法上規定を置くことは困難であると考えました」としています。「問われることになる」との文言の意図が明確ではありませんが、2通りの読み方を指摘しておきます。ひとつは、国民の国防義務を明確に書きたいけれども、徴兵制をやれるようにしたいわけではないので書けない、という読み方です。もうひとつは、徴兵制について正面から争点になってしまうのは不都合であるので、憲法には明記せず、もし必要なときがくれば法律で徴兵できるような曖昧な条文にしておく、という読み方です。

自民党憲法草案の条文解説より

 

感想: 自衛隊が合憲か違憲かという問題が一番大きいと思いますが、この内容ではそれを越えて「自衛」という言葉の解釈によっては何でも可能なのではないかと思うのです。

過去の事例に適用して考えると・・・

→ アメリカ自身が過ちを認めたイラク戦争に自衛隊が派遣されましたが、この新憲法下だったならば現地で戦闘参加していたのでは?

→ 朝鮮戦争、ベトナム戦争でも自衛のために日本の軍隊が戦闘参加していたのではないでしょうか?

→ 盛んに喧伝されている中国の脅威論がありますが、この内容はそれを遥かに超えていて、自衛のための先制攻撃論によって、「自衛」「集団的自衛権」という大義名分で他国の戦争に参加したり侵略も可能になってしまうのでは?

 

11条 (基本的人権の享有)

「人権規定も、我が国の歴史、文化、伝統を踏まえたものであることも必要だと考えます。」とQ&Aにあり、歴史、文化、伝統に反する自由は人権ではない(あるいは価値が低い)という新たな解釈がとられたと読めます。 天賦人権説を否定した点については19条をご覧ください。

自民党憲法草案の条文解説より

感想: そういう解釈が可能ということ?

 

12条 (国民の責務)

自由及び権利には責任及び義務が伴うことを自覚し、常に公益及び公の秩序に反してはならない

Q&Aで、「「公共の福祉」という文言を「公益及び公の秩序」と改正することにより、憲法によって保障される基本的人権の制約は、人権相互の衝突の場合に限られるものではないことを明らかにした」とされています。

12条は人権全体について規定しているので、現行・草案ともに、13条以下の全ての人権に係ります

自民党憲法草案の条文解説より

 

感想: 公益、公の秩序の定義が時の政権次第というのがこわい・・・

 

13条 (人としての尊重等)

全て国民は、個人 として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉 公益及び公の秩序に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大限に尊重されなければならない。

 「個人として」が「人として」に変わっており、24条では「個人」を残していることと対比すると、個人としては尊重されないことがわかります(これにより全体主義方向に傾く・・・)

自民党憲法草案の条文解説より

 

感想: 絶対に変えなくてはいけない理由がわからない

 

18条 (身体の拘束及び苦役からの自由)

徴兵制は、「意に反する苦役」に当たるため違憲とされてきました。意に反する苦役の禁止は2項でそのまま維持されています。しかし、国防軍も国防義務(前文3項、9条の3)も「公益及び公の秩序」による制約も憲法尊重義務(102条1項)もなかった現行憲法下での「意に反する苦役」に当たるとの議論がそのまま妥当するわけではありません。意に反する苦役かどうかは憲法の趣旨に照らして判断されるのですから、新憲法上の重要な国益である国防軍に参加することは苦役ではないと解釈することが可能ですし、自衛隊時代から自民党では「苦役だなんて自衛隊員に失礼だ」といった議論がありました

自民党憲法草案の条文解説より

 

感想: どちらともとれるということ?

 

19条

思想及び良心の自由は、これを侵してはならない 保障する

「保障する」との文言に変わっており、同様の変更は随所に見られます。もっとも、現行憲法にも「保障する」という文言はあり(21条等)、どちらでも人権一般に12条13条の公共の福祉による最小限度の制約があることは変わりませんから、この文言の違いによる差は基本的にありませんでした
差がなかったとはいえ、あえて変更したという事実には意味があります。Q&Aの記述で関連するのは「西欧の天賦人権説に基づいて規定されていると思われるものが散見されることから、こうした規定は改める必要がある」という部分です。「侵してはならない」を「保障する」に改めるということは、たとえ憲法がなくても誰もが当然有している権利である、という意味での「天賦人権説」を否定した、と読めますから、そのようなスタンスの憲法であるということを読み取ることはできます。具体的な違いが直ちに生ずるわけではないことは強調しておきます。
一般論としては以上の通りですが、 19条に限っていえば、従来、思想良心が内心にとどまる限り絶対的保障であったのが、「保障する」にかわることにより、公益及び公の秩序による制限があり得ることになると考えることも可能です。

自民党憲法草案の条文解説より

 

感想: 公益及び公の秩序が肝・・・

 

第19条の2(個人情報の不当取得の禁止等)
何人も、個人に関する情報を不当に取得し、保有し、又は利用してはならない。

19条の2は、プライバシー権に資するとQ&Aにあり、結果的に資するとは言えますが、条文上国民の権利と読むのは無理であり、本来法律で定めるべき性質の規定です(2005年の草案では、「何人も、自己に関する情報を不当に取得され、保有され、又は利用されない。」としていたので、権利と読める規定でした。)。
全ての者に個人情報保護義務を課したことで、例えば取材、探偵、署名運動、連絡網作成などが行いにくくなります。また、現行法上の個人情報は「生存する個人に関する情報」(行政機関個人情報保護法2条2項、個人情報保護法2条1項)とされているのと比べると、死者の情報も規制対象になっていると読めます。適法違法ではなく当不当を問題にしていますから、法律に反していなくても不当であれば憲法違反になります。

自民党憲法草案の条文解説より

 

感想: これは、公人(政治家、役人)の不正・汚職があったり疑われる場合に捜査を困難にするということで非常に問題があるということです。

 

第20条 (信教の自由)

(現行)いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない →(草案) いかなる宗教団体に対しても、特権を与えてはならない

宗教団体による政治上の権力の行使が禁止されなくなりました。

自民党憲法草案の条文解説より

 

感想: なんで???

 

第21条 (表現の自由)

1 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、保障する。
2 前項の規定にかかわらず、公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行い、並びにそれを目的として結社をすることは、認められない。

公益及び公の秩序を害することを目的とした表現行為が禁止されました。行為態様ではなく目的に着目した規制なので、その活動自体は「公益及び公の秩序」を害しなくても、その活動の目的が「公益及び公の秩序」を害すると判断されれば禁止されます

そして、目的が公益及び公の秩序を害するかどうかの一次的判断は行政(政府)が行うわけですから、ときの政府の方針に反する活動は行えないこととなり得ます。

自民党憲法草案の条文解説より

 

感想: 極端ですが、政府が「共産主義やアナーキストの主張は公益に反する」と判断した場合、共産党は解散、マルクスはじめ共産主義の書は発禁となり、そのような本を読むこと、ウェブサイトを閲覧することも「活動」になるので取り締まることができるようになる???

 

第24条(家族、婚姻等に関する基本原則)
1 家族は、社会の自然かつ基礎的な単位として、尊重される。家族は、互いに助け合わなければならない。

夫婦別姓が選択できないことを合憲とする方向に働く変更です。また、家族が助け合えていないせいで貧しい場合には、国の保護が得られにくくなります

自民党憲法草案の条文解説より

 

感想: 仲の悪い家族、夫婦には罰則?

 

第98条(緊急事態の宣言)
1 内閣総理大臣は、我が国に対する外部からの武力攻撃、内乱等による社会秩序の混乱、地震等による大規模な自然災害その他の法律で定める緊急事態において、特に必要があると認めるときは、法律の定めるところにより、閣議にかけて、緊急事態の宣言を発することができる。

第99条(緊急事態の宣言の効果)
1 緊急事態の宣言が発せられたときは、法律の定めるところにより、内閣は法律と同一の効力を有する政令を制定することができるほか、内閣総理大臣は財政上必要な支出その他の処分を行い、地方自治体の長に対して必要な指示をすることができる。
2 前項の政令の制定及び処分については、法律の定めるところにより、事後に国会の承認を得なければならない。
3 緊急事態の宣言が発せられた場合には、何人も、法律の定めるところにより、当該宣言に係る事態において国民の生命、身体及び財産を守るために行われる措置に関して発せられる国その他公の機関の指示に従わなければならない。この場合においても、第十四条、第十八条、第十九条、第二十一条その他の基本的人権に関する規定は、最大限に尊重されなければならない。
4 緊急事態の宣言が発せられた場合においては、法律の定めるところにより、その宣言が効力を有する期間、衆議院は解散されないものとし、両議院の議員の任期及びその選挙期日の特例を設けることができる。

 

感想: これはもっとも恐れられている条文です。他の国にも同様のものはもちろんあるのですが、草案のままではすきだらけで悪用される余地が大きいそうです。だから全部ダメとは思いませんが、問題点を改めない限りとても認められない内容なのかと。

以下の番組でも繰り返し「まさか日本ではあり得ない」としつつも強く危惧しています。

 

第十章 改正
第100条
1 この憲法の改正は、衆議院又は参議院の議員の発議により、両議院のそれぞれの総議員の三分の二以上過半数の賛成で国会が議決し、国民に提案してその承認を得なければならない。この承認には、法律の定めるところにより行われる国民の投票において有効投票の過半数の賛成を必要とする。
2 憲法改正について前項の承認を経たときは、天皇は、国民の名で、この憲法と一体を成すものとして直ちに憲法改正を公布する。

感想: 3分の2というのは与野党合意を必要とする数字でしたが、過半数だと野党の合意なく与党単独での憲法改正が可能になります。有効投票の過半数としたことで、投票率が40%の場合、その過半数、つまり有権者の20%で憲法改正の可否が決まります。

「一体を成す」を削除したので、改正ではなくまるごと変更してまったくの別物にすることも可能。

第十章 最高法規
現行第97条
 この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これらの権利は、過去幾多の試錬に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。

→ まるごと削除されます・・・

実質的最高法規性をうたう97条が削除されていますが、11条、12条を再確認するものなので、削除により基本的人権がなくなるわけではありません。しかし、97条がこの位置にあった趣旨は、実質的最高法規性から98条の形式的最高法規性が導き出される(人権が大事だからこそ、それを定めた憲法が最上位の法である)という歴史的意義を示す点にありましたから、これを削除することは、歴史を踏まえるべきとしている自民党の考え(前文、11条参照)と整合的ではありません。
そうすると、削除することで人権の不可侵性を弱めたと考えることが自然です。憲法が最高法規である理由が、人権が重要だからというわけでは必ずしもなくなるわけですから、運用上変化がある可能性があるだけでなく、その後の憲法改正にあたり、各人権規定の改正に限界はないと考えやすくなります。

自民党憲法草案の条文解説より

 

感想: 現行憲法の「最高法規」の第一にまず基本的人権が書かれているということ自体の重みを感じるのですが、これをあえてまるごと削除する理由は、「重複するから」だそうです。ならば、絶対に削除しなければならないわけではありません。繰り返しになりますが、不用意な削除、変更が後に大きな災いを招く(すきを悪用される)ことの方が遥かに恐ろしいと思います。

ここで疑問に思うのが、憲法改正案の国民投票はこれら複数の条文がすべてセットとして単に「賛成」「反対」の票を投じるのでしょうから、今回の自民党案のように憲法全文にわたり大きな変更を施す場合には、「ここはいいけどここはダメ」という国民的議論が不可欠と思います。

第102条(憲法尊重擁護義務)
1 全て国民は、この憲法を尊重しなければならない。
2 天皇又は摂政及び国会議員、国務大臣、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負う。

現在の憲法の主な役割は、法律とは逆で、国民が遵守するものではなく国家が遵守するものですので、憲法の本質が変容しています。

法律によって例えば憲法不敬罪のようなものを作った場合の正当化根拠となるという意味を持ちます。また、憲法全体を尊重することが義務になっているわけですから、憲法の全ての規定が義務的性格を帯びることになります。例えば、「国民と協力して、領土、領海及び領空を保全し、その資源を確保しなければならない」とする9条の3を(遵守を超えて)尊重しなければならないため、国民は国と協力して領土領海領空を保全しなければなりません。

自民党憲法草案の条文解説より

 

えらい長くなってしまいましたが、参考までに以下憲法改正推進本部の方々のお名前です。


自民党憲法改正草案

http://constitution.jimin.jp/draft/

同Q&A

http://constitution.jimin.jp/faq/

憲法改正推進本部
平成23年12月20日現在
本部長 保利耕輔
最高顧問 麻生太郎 安倍晋三 福田康夫 森喜朗
顧問 古賀誠 中川秀直 野田毅 谷川秀善 中曽根弘文 関谷勝嗣 中山太郎 船田元 保岡興治
副会長 石破茂 木村太郎 中谷元 平沢勝栄 古屋圭司 小坂憲次 中川雅治 溝手顕正
事務局長 中谷元
事務局次長 井上信治 近藤三津枝 礒崎陽輔 岡田直樹

憲法改正推進本部 起草委員会
平成23年12月22日
委員長 中谷元
顧問 保利耕輔 小坂憲次
幹事 川口順子 中川雅治 西田昌司
委員 井上信治 石破茂 木村太郎 近藤三津枝<兼務> 柴山昌彦 田村憲久 棚橋泰文 中川秀直 野田毅 平沢勝栄 古屋圭司 有村治子 礒崎陽輔<兼務> 衛藤晟一 大家敏志 片山さつき 佐藤正久 中曽根弘文 藤川政人 古川俊治 丸山和也 山谷えり子 若林健太
事務局長 礒崎陽輔
事務局次長 近藤三津枝


 

 

山片重信

 

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