おそるべし、ヨーロッパの言語政策

昨年9月に国際交流基金ケルン日本文化会館で行われたあるワークショップ。
その詳細な報告書がアップされているので読んだところ、衝撃を受けました。
そして、その考え方とワークショップの内容に非常に感銘を受けたのでかいつまんで紹介いたします。

ちなみに報告書は70ページのボリュームですが、非常におすすめです。(PDFが開きます。)
複言語キッズの日本語習得・日本語継承をサポートする ワークショップ「こどもCan Do」
なお、より詳しくは国際交流基金ケルン日本文化会館のホームページ上で公開されています。

このワークショップをもとにデュッセルドルフでもワークショップが6月に開催されます。

こどもの言語教育、どうすれば?
今すぐ知りたい、考えたい。
ワークショップ「我が家の言語政策について考える」
ワークショップの講師はケルンのワークショップを行ったメンバーのうちのおひとりです。
国際結婚家庭や日本語ともう1つの言語を使う環境にいる子供を持つ方にはおすすめ!

 

日本語と現地語、両方の習得
親としては、子供の日本語と現地語、両方がしっかり育ってほしい、という思いますが、ことはそう簡単ではありません。
もちろん語学の才能に恵まれた子は例外ですが。
たいていは、学校に入れば現地語がメインになり、日本語はどんどん弱くなっていきます。
さらに、現地語の完全な習得も、学校に行っているから大丈夫、と思っていると実はそう簡単ではありません。
「聞く・話す」は問題ないように見えても、「読み書き」の特に「書き」は非常にハードルが高く、多くの子供が苦労しています。
そうした親子に明るい光を与えてくれるのがCEFRの考え方です。
それにもとづいて行われたケルンのワークショップでは、多くの参加者が新たな視点を獲得、発見と喜び、希望を持ち帰ったであろうと想像されます。

 

CEFRとは? ~言語教育は「平和教育」の手段~

ヨーロッパに来て語学の授業をとろうとすると必ず目にするA1,A2,B1・・・というレベル分けの基準。
これを決めているのがCEFR(ヨーロッパ共通言語参照枠)、セファールと読みます。
このCEFRの考え方が私たちのような外国に住む家庭や国際結婚家庭の子供、つまり複数の言語・文化環境に育つ子供の「ことば」の問題に非常に大切なヒントを与えてくれるのです。
CEFRは、複言語・複文化主義を唱えています。

第二次大戦後間もなく、二度とこのような惨禍を繰り返してはならないという意思共有のもと、ヨーロッパの統合と平和を目指して欧州評議会が創設されました。
欧州評議会は言語教育政策を通して国家と国家が、国境を越えて個人と個人が仲良く豊かに交流することを目指しています。
さらに国家や民族というくくり、ドイツ人、アフガニスタン人、アフリカ人、日本人といったことに関係なくヨーロッパに暮らす人々すべてが地域を構成する大切なヨーロッパ市民として、そのために平和教育、個人の幸福の追求を考えてCEFRを作成したのです。
これ、理想としては素晴らしいことではないでしょうか。
この理想の実現のためにつくられたCEFR、それがまた非常に深いところから考え抜かれてつくられています。

 
CEFRの考え方 其の一 「複言語主義」

CEFRの考え方を示す3つの柱、その第一が「複言語主義」。
これは、私たちが想像するような英語、ドイツ語、フランス語、、、といったこととは次元がまったく違うのです。ここからして衝撃を受けました。
英語、日本語、ドイツ語・・・といった視点は「多言語」と呼び、「複言語」と言う時は、これとはまったく異なる視点です。

CEFRが唱える「複言語主義」は、「わたし語」という考え方なのです。
つまり、世界70億人いれば、70億の「わたし語」がある。

例えば、日本人で日本語しか話さない子供一人一人を見ても誰一人としてまったく同じ言語体系の人はいません。
男の子、女の子、アニメ好き、鉄道ファン、野球マニア、それぞれの家庭環境、興味によってボキャブラリーも知識も違います。
その一人ひとりに焦点をあて、大切にしているのがCEFRの「複言語主義」。
そこまで徹底的に、根本的に考えて構築されているのかと驚くばかりです。
その視点は国家や民族という枠組みを取っ払い、私たち個人個人の内的な幸せに目が向けられています。
私たち個人個人が主役なのです。

 
CEFRの考え方 其の二 「行動中心アプローチ」

「複言語主義」という視点から見て、個人の言語学習には、どのような学びや教育が必要なのか?

私たち人間はみな「社会的に行動するもの(social agents)」として位置づけられます。
私たちは生活の中で何らかの「課題」を解決することを求められる社会の成員であり、課題と取り組む具体的な行動を通してことばを獲得していきます。
これを目的行動と言い、目的行動には言語活動と非言語活動があります。
ちょっとわかりづらかったので以下は私の解釈ですが、
例えば買い物をするという課題に対して行動することで買い物に必要なことばを学びます。
学校の学びでいえば、例えば、「なぜデュッセルドルフが大きな都市として発展したのか」を地理的、歴史的に考察する」といった課題に対して取り組むことは、資料を調べ、自分のことばでまとめ、発表することで地理、歴史、政治、経済、そしてことばを使って情報の取り出し、再構築、効果的な伝達といった総合的なことばの力を獲得することにつながります。

 
CEFRの考え方 其の三 social agents

CEFRの背景にあるのが「言語教育は平和教育の手段」という思想でした。
ことばの学びは「個人の幸せのため、幸せな個人が集まって幸せな社会ができていく」。
その考えがこのsocial agents に直接的に見られます。

1 doing not being
ただ立っているだけで何もしないのではなく、行動する人を育てる

2 initiative & self regulation
自主自律。主体的に動き、自分を律する、コントロールできる人を育てる。

3 mediates & mediated by social context
独りよがりではなく社会とつながる人を育てる

4 includes awareness of responsibility for one’s own action
自分の行動に責任を持つ人を育てる

A1, A2, B1…といった言語教育の設計が実はこんなに奥深いところから、個人個人の幸せ、ひいては社会の幸せのために考えて設計されていたとは驚きです。おそるべし、ヨーロッパの言語政策。。。

複言語キッズに生かすためのCEFRの4つのポイント

ワークショップではCEFRの考え方をベースに以下の4つのポイントに注目してグループで課題に取り組みます。
そうすると、「うちの子、すごい!」と親ばか大会になったり、子供の置かれている状況に対して適切な理解が得られたり、今後のことばの学びに建設的なアプローチが見えてくるようです。

4つのポイントとは、

1 「できること」を評価する・・・Can Do
2 「得意なこと」を大切にする
3 「わたしのことば」を育てていく
4 「自分で」「生涯」学び続ける

 

1  「できること」を評価する の例

自分の言語のレベルについて次のように言われたときにどう思いますか?

A 丁寧にゆっくり話された指示なら理解できる。
B 丁寧にゆっくりと話された指示でないと理解できない。

 
ちょっとでもできることを認めるのか認めないのか。
子供(大人でも)「できない」というときにまったくゼロ、何もできないという場合はごくまれです。
たいていは部分的には「できる」のです。

短くまとめるつもりが既に長くなりすぎてしまいました。
つづく・・・

山片重信

こどもの言語教育、どうすれば?
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ワークショップ「我が家の言語政策について考える」

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カテゴリー: 教育, 未分類

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