このところ教育に関連して興味深いお話を聞く機会が立て続けに聞く機会がありました。
日本で生まれ育ってきた人間が外国に住んでみると当然ながら驚くことがたくさんあります。そうしたときに日本の基準を持ち込まずになるべくニュートラルにものごとを見たいものですが、人間は主観なしには感じたり考えたりできないもの、なかなか難しいものですね。
長所は短所の裏返し、短所は長所の裏返し、過ぎたるは及ばざるがごとし。
ドイツが良いとか日本が良いとかそんな単純なものではなく、両方を知ると両方の良し悪しが見えてきて大変面白いものです。自分の狭い固定観念が何度壊されたことでしょう。
一般的に日本人は(外国の人と比べて)表現するのが苦手と言われたりするようです。日本の教育、社会はどちらかというと「まず言うことを聞く」「言いたいことを言わない」「出る杭は打たれる」環境ではないでしょうか。
その環境で幼いころから育っているとどうしても自然な自己を表現することが難しくなってしまうように思います。
音楽留学の日本人の多くがもっとも困っているのがこのことだそうです。技術的には大変優れているのに自分の中に表現したいものがない、わからないので伝わってくるものが乏しいそうです。
「で?何を表現したいの?何を伝えたいの?」と言われてしまいます。
これは音楽関係の方から聞いた話の受け売りですが、日本人の留学生がよく口にするのは、
「先生、ショパンはどう弾けばよいのですか?」
「バッハの弾き方を教えてください」
「これでいいのでしょうか?」
のような言葉だそうです。
それでは「なぜ音楽をしているの・・・?」と言われてしまいます。
日本ではお手本通り、先生の言う通りにできれば花丸でずっと育ってきたために大きくなってからそれを変えるのは大変な困難が伴います。
「まず言われた通り」ばかりしていると次第に自分で考えなくなり、さらには感じなくなっていくのではないでしょうか。無意識に自分を抑えつけている状態です。
外国では逆のことが多いですね。逆に自己主張ばかりで困ってしまうことも。
人の言葉に耳を傾けることとしっかり自分を表現すること。
両極端ではなく、両方の良いところを取り入れてバランス良く、これがなかなか難しいものです。
日本の多くの学校が帰国子女枠を設けているのはそうした日本人的な壁を超える要素をもたらしてくれるからではないでしょうか。
以下のお話も受け売りですが大変印象に残ったので書き留めておきます。
ドイツの幼稚園に入った子供が最初に覚えてきた言葉は「Nein!」
幼稚園で子供がお友達にぶたれて泣いて帰ってきたのでいったい何があったのかと先生に事情を聞きにいったら・・・
「あなたはちゃんとNein!と言わないとダメだよ。」
「お母さんはきちんとNein!を教えてあげてください。」
「いやなことをされたらきっぱりNein!と言わないとダメです。」
ぶたれた子にお説教、ぶった子には特に何もなかったそうです(知る限りでは)。
みなさんはどう思われますか?
なるほど~と納得できるでしょうか。
この話を聞いたとき、日本だったら真逆の対応になるのではないかな~と思いました。
「お友達をぶってはいけません。」
「みんな仲良くしましょう」
という感じで。
「自分の身は自分で守る。」
「きちんと主張すべきことを主張する。」
この2つが日本とドイツで本当に対照的で面白い点です。
協調性、和を尊ぶ日本と個人主義のドイツ。
どちらも一長一短です。
個人主義というと身勝手なイメージにつながり聴こえは悪いかもしれません。もちろんそうした側面もあります。ただし、裏返せば個人個人を尊重するということでもあります。私もあなたも大切。
私事ですが、子供の通う学校の個々の生徒への対応は信じられないほど柔軟で涙が出るほどありがたいものです。ただしそれは黙っていてもしてくれるものではありません。こちらから主張すべきことを主張すると「それは問題ね。特例としてこうしましょうか?」と思ってもみない素晴らしい解決策を提示してくれたりすることも二度や三度ではありませんでした。
協調性、和を重んじると言うのは大変素晴らしいことに思えますが、その陰には個の抑圧、個の軽視といった負の側面があることを忘れてはいけないでしょう。「世間」や「空気」に逆らうと大変なことになったりすることも・・・出る杭は打たれてしまいます。冒頭のお話にも少し関係してきます。
長くなってしまったので続きはまた近いうち(忘れないうち)に書きたいと思います。
ここまでお読み頂きありがとうございます。
山片重信
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