パリやローマに行くと、同じ土産物をゴザを並べて売っている人たち、いますよね。どうして、同じものを同じ場所で売って平然としていられるのか、同じ商人として信じられません。
レストランでこれをやると、チャイナタウンの出来上がり。もちろん土産物と違って、料理や接客は店によって違ってきますが、競争のない「ブルーオーシャン」よりも血みどろの「レッドオーシャン」に身を置いているという点では同じことです。
土産物ものもレストランも、「部分最適」(個の最適)の点からは競争を避けるべく離れた方がよいわけですが、これが実は「全体最適」とはならない。離れていては、インパクトのない店がバラバラに点在するだけの結果になりがちです。ところが、数が揃うと「引力」が生じる。星のように質量が大きくなればなるほど引力が増して、トラフィックが増えるのです。これを私は「チャイナタウン効果」と呼んでいます。
「チャイナタウン化」してしまうと、以下のような効果が消費者にあるものと思われます:
- 予約がなくても、どの店がいいか決まっていなくても、とりあえず行ってみてから、客の入りや店構えを見てから選ぶことができる。だから、行きやすくなる。
- その土地へのアクセス(最寄り駅や駐車場の場所)が分かっているから楽チン。
- その土地に行くこと自体が、エンターテインメントになる。「観光地化」する。
今ロンドンにいるのですが、ロンドンの Soho はまさにそれ。チャイナタウンも含めて、ピカデリーサーカス以北・オックスフォードストリートまでの小さなエリアですが、夜になると四方八方から人がゾロゾロと集まってきて、すごい混雑です。レストランやバーはどこも満員。ショッピング街と劇場街の間という特別な立地に、あまりお値段のはらないオシャレな店がひしめいているのですから、人が集まるはずです。インターナショナルなエリアなので和食も多いのですが、ラーメン屋はもちろんのこと、日本人スタッフが一人もいない(と見えた)お寿司屋にすら行列ができているのには驚きました(← しかも一軒ではありません)。
そういう「引力」のある場所は、世界中にどこにでもあって、身近な例ではデュッセルドルフの Immermannstraße(インマーマン通り)がまさにそれ。旧市街の Flingerstraße や Bolkerstraße も同様ですね。フランクフルトの Goethestraße や Fressgass(フレスガス)も同じ。新宿の歌舞伎町や月島の「もんじゃストリート」などもそうです。
次のステップとして、自ら「チャイナタウン」を作るにはどうしたらよいか、とか、既に発生している「引力」に異なった色のものをどう入れていくか(「立地とコンセプトのミスマッチ」命題)など、更にテーマは広がります。それらは、やがて触れたいと思います。
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文: 黒須寛之 Wakyo Europe – Market Expansion Management & Advisory
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そうか、それってまだ名無しなのですね。デパートも1軒ポツンとあるよりも、集まった方がパイ自体を大きくできるという方法。
実際に、デュッセルドルフのKarstadt とKaufhof の2軒のデパートが正にそれです。あそこの人通り、凄いで。
フランクフルトで言えば、ZEIL でしょうか...
だからこそ競合よりも、協業だと思うのです。
競合するよりも、協業した方が得する法則...
なんちゃって...
コメントありがとうございます。
ただ、当事者の立場でみると、「勝ち負け」が気にかかるので実はシンドイことではあります。
しかし、そこはメゲずに切磋琢磨し合うことで、「場」そのものが魅力的になるということですね。
野球やサッカーにたとえると、1チームが圧倒的に強いリーグもいいが、強豪が毎回本気で勝負するリーグの方がはるかに面白い、と言えましょうか。