デュッセルドルフの8月の星空+こと座(Lyra)

私は長年、地中海世界で星空を眺め、星空を撮影してきました。
暑く乾燥した世界の天と地の間で、オリオン座を意味する古代の紋章を20年間探し続けてきました。 長い放浪の結果、様々な星空を語ることが出来ます。月々の星空を紹介しながら古代へとタイムスリップの旅に誘うページとご理解ください。

 

■7月の星空
今月はどんな星空なのか紹介します。北緯51度のデュッセルドルフでは8月15日23時頃はこのような星空となります。

201408今月の真夜中は惑星が見えません。多くは夕方か明け方の低い位置にあり、接近しているのですが、高緯度地方独特の昼の長い日照時間によって、観察するには厳しい条件です。

◯8月の天文現象

8月 3日   伝統的七夕(旧暦7月7日)
8月 3日   月と火星が大接近
8月 4日   月と土星が大接近
8月10日  満月(スーパームーン)20時頃
8月中旬   金星と木星、プレセペ星団が大接近
8月13日  ペルセウス座流星群 02時頃極大(出現期間7月20日~8月20日)
8月25日  新月 16時頃

幾つかピックアップしてみます。

◯惑星と月の接近
惑星は公道面上にあり、月の軌道面も近いことから、月と惑星の接近は毎月のようになります。今月も3日や4日、31日に惑星と月の接近があります。

◯スーパームーン
今月は「スーパームーン」があります。その年で最も大きく見える満月をそのように呼ぶようになりました。大きく見えるからといって、何か特別なことが起こるわけではないのです。今年は何処へ出かけるか考えていませんが、去年はギリシャのスニオン岬で撮影する予定でしたが、ギリシャ人の天文家と合流してアテネのアクロポリス周辺で撮影していました。L1004705

 

 

 

 

 

 

 

◯ペルセウス座流星群
今年のペルセウス座流星群は満月過ぎですので、条件は最悪です。条件が最悪であって、決して見えないわけではありません。満月後の明るい月明かりの為に、暗い流星がよく見えないのです。明るい流星ならば一晩に数個は確認できるでしょう。

IMG_2396s

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◯夏の大三角
天の川を背景にはくちょう座のデネブ星、天の川の西にこと座のベガ星(織姫星)、天の川を南西に下るとわし座のアルタイル星(彦星)といった明るい3星を頂点とした三角形を「夏の大三角」と呼んでいます。これは1,950年以後の呼び方のようで、天文詩人アラトスの「ファイノメナ(星空)」では見掛けませんでした。wikiの受け売りをしますと、最初に3角で結んだのはドイツのヨハン・ボーデが1816年に出版した書物の中の星図においてであったようですが、名称は与えられていたわけではなかったようです。_DSF0849sa

 

 

 

 

 

 

 

 

■こと座(Lyra)

乾燥した地中海地方で、夏に星空を眺めていますと、星空のBGMを感じることがあります。天の河の「せせらぎ」というイメージとこと座のもつ音楽に関わる星座が夏の夜空に輝いています。

夏は音楽の神であるアポロンに因んだ星座が目につきます。星座物語で関係する星座を数え上げてみますと、天の川に沿って、はくちょう座、こと座、いるか座、さそり座、へびつかい座、ヘルクレス座などが夏の夜空に輝いています。

Lyra

ディディマ遺跡(トルコ)のアポロン神殿とこと座をワンショットで。トルコ大使館&トルコ共和国文化観光省参事官室にて夜間撮影の許可を取得しての撮影。

確かにギリシャ滞在が3年も経過しますと、音に関する聴覚が変わります。特に「乾燥した地域で聞き取る高音域の拡がり」を身につけることになります。これは湿度を感じる地域では身に付かない特別な感覚です。濁音ではなく、半濁音の世界と言えるかもしれません。この感覚に気がついた頃、小澤征爾がアテネのアクロポリスに隣接したヘロディス・アティコス古代劇場で「アポロン讃歌」は堪えられないものがありました。演奏が終わる頃には天高くアポロンの聖鳥はくちょう座とこと座が輝いていたのですから。他にも夏の夜に聞くバラードが心に響きます。ギリシャ時代は何故かエロス・ラマゾッティばかり聞いていた記憶があります。昼なら「Una Tra Te」。夜なら「プ ケ ポワ」だったか。

さて、星空のBGMは私の気の迷いに起因するのですが、何となく夏の夜空を見上げると、そこにはこと座が輝いています。音楽の神アポロンの竪琴ですね。元々は幼いヘルメスがリクガメを繰り抜いて制作した7弦琴です(現在でもギリシャでは30センチ位の陸ガメが山中をウロウロしています)。アポロンは予言の知識と引き換えに、アポロンはヘルメスからこの竪琴を受け取ります。星座物語ではこの竪琴は後に楽人オルフェウスの所有となり、彼が奏でる曲は人々を魅了するだけでなく、動物や木々まで彼の音楽の虜になります。それどころか、彼はアルゴ船探検隊に参加した時は、大嵐を彼の音楽で宥めてしまうという神業を発揮します。このように古代ギリシャ人たちは早くから音楽に実際の力を認めた人々といえるでしょう。

◯アポロン>オルフェウス>(アリオン)

意外なことなのですが、オルフェウスは紀元前6世紀の文献(抒情詩人イビュコス)で「その名も高きオルフェウス」として登場してくるので、神話としてはかなり新しい存在です。ホメロスやヘシオドスといった古い文献には登場しません。毒蛇に噛まれて亡くなった彼の妻エウリュディケを取り戻しに彼は有名な「カタバシス(冥界降り)」を行います。「地上に戻るまで振り返って妻の顔を見てはいけない」というテーゼを破ってしまったために、妻の冥界からの奪還に失敗してしまう話が有名ですが、これはローマ神話とも受け取れる話であり、ローマ期でもルキアノスは奪還成功を匂わせた文献があります。古代ギリシャでは妻の奪還に成功したと受け取れる文献も意外と残されています。テーゼを作り、妻奪還に失敗した方が、ローマ人たちの話としては面白かったようです。orfeus

◯妻奪還成功例

  • エウリピデス(BC5世紀)「アルケスティス」
  • ディオドロス・シクルス(BC1世紀)「Bibliotheca Historica」
  • プルタルコス(AD1,2世紀)「エローティコス」で奪還成功が暗示
  • ルキアノス(AD2世紀)「死者たちの対話集」

◯妻奪還失敗例

  • プラトン(BC4世紀)「饗宴」幻影を見せられたのみで、奪還失敗
  • ウェルギリウス(BC1世紀)「農耕詩」奪還失敗
  • オウィディウス(BC1世紀)「メタモルフォーセ」奪還失敗
  • セネカ(AD1世紀)「狂えるヘラクレス」奪還失敗
  • 伝アポロドーロス(AD1,2世紀) 奪還失敗。この時のテーゼは「家に着くまで、後ろを振り向かない」
  • パウサニアス(AD2世紀)「ギリシャ案内記」奪還失敗

現在では妻奪還に失敗した話で統一されて紹介されますが、このように古代の文献を突いてみますと、実際は一つではなかったことがわかります。

さて妻奪還に失敗したオルフェウスは北ギリシャに位置するトラキア地方で過ごしていました。妻の死を悲しむレクイエムを聞かされるトラキア地方の女性たちには迷惑だったのでしょうね。そしてエウリュディケ以外の女性に興味を示さないオルフェウスにも問題があったのでしょう。ある時、オルフェウスは狂った女性たち(恐らくは秘儀でマイナスと化した狂える女性たち)に八つ裂きにされてしまいます。

特にオルフェウスの頭部と竪琴は共にへブロス川を降ってエーゲ海に流れ、レズボス島に漂着します。その時にはオルフェウスの口から神託まで告げることができたという神話が付加されています。島に流れ着いたオルフェウスとその竪琴は島のアポロン神殿に奉納され、竪琴はこと座となって天に輝くようになった、ということです。この島は古代でも現代でも芸術家の島として知られるようになり、抒情詩人サッフォーやアルカイオスなどを輩出しました。_orfe

私はレズボス島を多く訪れました。サッフォーの月明かりの歌や夕づつの詩、スバルの詩を映像化してみたかったのですが、まだ20世紀のフィルム時代のことですから、限界がありました。デジタル化した現在、どのような映像となるのか、それはそれで楽しみです。

過去にオルフェウスが奉納されたという島のアポロン神殿を探してみました。島の中央部にクロペジ遺跡と呼ばれる遺跡が存在し、此処にはアポロン神殿があります。現在の地図では遺跡としてマーキングされていません。恐らく土砂崩れで道が塞がれてしまい復旧する目処が立たないのだと思われます。確かに途中までの道は急峻でボロボロでした。ギリシャではこのように地図から消え去った遺跡が幾つかあります。遺跡自体は残されていますが、そこまでのアプローチが一般的な交通手段では行けなくなったということです。

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クロペジ遺跡のアポロン神殿跡

オルフェウスが過ごしたとされる北部ギリシャのトラキア地方は、秘儀の世界に満ちた地方です。ザルモクシス、レソス、カベイロイなど様々な秘儀が存在し、オルフェウス教団も秘儀を持っていました。オルフェウス教には後のヘルメス文書にも通じますし、オルフェウス像をキリストに見立てる動きまで記録されています。オルフェウスには楽人としての輝かしい経歴に加えて、怪しい闇も存在するのです。

 

 

 
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写真家(日本写真家協会会員、日本舞台写真家協会会員) 私は長年、地中海世界で星空を眺め、星空を撮影してきました。 暑く乾燥した世界の天と地の間で、オリオン座を意味する古代の紋章を探し続けていました。訪れた遺跡は260遺跡を超え、様々な星空を語ることが出来ます。月々の星空を紹介しながら古代へとタイムスリップの旅に誘うページとご理解ください。著書に単行本「ギリシャ星座周遊記」(地人書簡)、写真集「星空」(日本カメラ社)など。

カテゴリー: ドイツの暮らし

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