身も実も取られてーヨーロッパ並みには なったけれど。

昨年12月、最高裁である判決が下った。
嫡出子と嫡子でない子との間の遺産相続に差別があってはならない、等分に分けるべし、という判決。今までの法は憲法で定めた「法の下の平等」に違反している。

というわけである。嫡出とは戸籍上、記されている正式な婚姻をしている間の子という意味である。いかにも法律用語という冷たい響きを持っているが、今はそれについて述べない。

今までの日本には正式な婚姻関係の間の子とそうでない子との間には、遺産相続に際して、大きな差があった。

正式な婚姻関係の間にない子は、嫡出子の「半分」しか貰えなかった。例を引けば、男性が家族を捨て、新しい愛人の元に行ってそこで子どもが生まれたとすれば、その子どもは、前の家族の子どもの半分しか貰えなかったわけである。

それだけ日本では役所に提出した書類、「書面上の家族」が重視され続けてきた。しかしながら、これは、おかしいと、愛人との間に出来た子は裁判に訴え、最高裁まで行き、その遺産の権利を勝ち取ったわけである。素晴らしい。

裁判所前では、その愛人の子がインタビューに応じていた。長く家族として暮らしてながらも、法律上の夫婦の間の子ではない、ということで父からの遺産を子どもが貰えないなんて、おかしい。今回の判決は画期的だ、本当に嬉しい、と。

一緒に裁判を闘ってきた仲間が万歳をしている。裁判では、日本の民法の世界的な遅れまで示唆するような文面がある。

「・・・ヨーロッパ、ドイツにおいては1998年、フランスにおいては2001年、嫡出と嫡出でない子の遺産相続は等分であるべし、という法が出来ている・・」と裁判長が述べている。

へえ、と私は改めて感心する。そうすると日本のこの遺産差別、日本はヨーロッパより10年以上も遅れていたわけか、そんな差別がなくなって、ヨーロッパ並みに民法が変わってよかったなあ、と単純に喜んでいた。

しかし、男性の元の家族の子どもたちのエピソードを聞き私は、胸が詰まった。なんとも言えない重苦しい思いにとらわれた。

遺産分与は何をおいても「遺言」が重視されるが、この例の場合、遺言はない。元の家族、破綻に追い込まれた実子である、その長女は言う。

「私は父親のぬくもりを知らない。父はレストラン経営者であったが、そこで親しくなったお手伝いの女性とそのレストランごと、持って行ってしまった。

私たちは、父の姓を名乗っており、それだけは法律上守られているのだというその自負に支えられて今まで生きてきた。父の今の家庭がどんなに愛情に満ちていようと、法律上は私たちの方が家族なんだと信じてきた。

遺産においても、私たちは、父がいざとなった時、父の愛人の子どもよりも倍もらえる権利があるんだ、とずっとそれを支えに生きてきたのに、家庭を破壊され、父も取られ、遺産も私たちと同じ、とは『身も実も取られたと同然だ』」というような内容だったと思う。

悲嘆にくれた実子たちの裁判判決への絶望を前にして、私は言葉を失う。子どもは平等である、遺産分与に関しても戸籍にかかわらず平等であるべきだ、そう信じている。

けれど、その反面こういう事実もあるのだ。父は法律上存在するのみだけど、それを支えに生きている子ども。

「法の下の平等」に違反しているということで、父も遺産も奪われる実子達はこの判決以降、確かに増えてくると思われる。

画期的な判決!これでヨーロッパ並みの民法!という新聞の見出しを見ながらも、その影で泣く実子達のことも忘れてはならないのだ、と思わせる判決であった。

佐藤庸子

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