デュッセルドルフの6月の星空+おとめ座周辺

私は長年、地中海世界で星空を眺め、星空を撮影してきました。
暑く乾燥した世界の天と地の間で、オリオン座を意味する古代の紋章を探し続けていました。放浪の結果、様々な星空を語ることが出来ます。月々の星空を紹介しながら古代へとタイムスリップの旅に誘うページとご理解ください。

デュッセルドルフは北緯51度あります。東京が北緯35度ですから、北極星が随分と高い位置に輝いているという第一印象があります。冬の曇天の時期から春に変わり、夜の寒さも和らいできた5月初めにラインタワーの日周運動を撮影しに出掛けました。ラインタワーも高いのですが、「うわ〜、ポラリス高い!」という印象を受けたものです。天の北極が高いので、東の地平線から見える星の駆け上がり方や西の地平線に沈むときの回り込みなんか、面白そうに感じました。

■6月の星空
今月はどんな星空なのか紹介します。

6月15日24時の星空

6月15日24時の星空

アンタレス周辺の派手な星域

アンタレス周辺の派手な星域

6月は夏至と絡むので、夜の時間がとても短いですね。
日の出が5時15分
日の入が21時52分  (6月15日)
ですから、実際に見える星空は4時間くらいしかありません。東京だと6時間くらいですか。
私自身、チョット、ショックです。何がショックかといいますと、、、

・さそり座が半分しか見えないです(ドイツでは高度が低くてアンタレス周辺の撮影ができないですね)。

・ペルセウス座がほぼ「周極星座」です。
・黄色で表示した黄道が異様に低いです。
・エジプトの3大ピラミッド時代の北極星であるりゅう座α星トゥバンが天頂近くに輝いています。5000年の時代差と20度違う緯度によって、見え方が全然違っています。

■6月の天文現象

6月10日の月と土星の接近

6月10日の月と土星の接近

10日(火)     月と土星が大接近 ←お薦め(真夜中)
13日(金)  満月
21日(土)  夏至(11時45分 太陽黄経90度)
24日(水)  細い月と金星が接近 (04時18分)
27日(金)  新月

今月は流星群も無いので、些か寂しい星空ですね。
「夏至」の話は7月にします。よく考えてみてください。エジプトならば夏至が新年でした。だから夏至から1月がスタートすることになります。現在の暦では6月下旬ですが、10日ほどズレてしまっています。これは12月にある冬至を1月とは考えないことと同じです。古代の暦を考えることで克服しておかなければならない意識問題なのです。つまり古代エジプトやアテネは夏至が1月、現代なら7月が妥当と考えるのです。
古代社会、特にカエサル以前の異教世界の古代社会では、春分や夏至といった至点分点日は儀式と自然界の様相が密接に結びつき、特に重要でした。この話は来月にしたいと思います。

■おとめ座とスピカについて

おとめ座。静かな星域です。

おとめ座。静かな星域です。

北天の星座たちは1年を通じて見られますので、今月は直ぐに沈んでしまう南西の星座に注目してみましょう。おとめ座やてんびん座が確認できます。どちらの星座も明るい星が少ないので星座の形を当て嵌めるのは少々難しいかもしれません。
おとめ座に輝く1等星のスピカは春の星座で、6月は南西の空低く輝いています。今年はスピカの近くに赤い火星が輝いているので、見つけやすいかと思います。スピカは古代世界最大の天文学者であるヒッパルコスが分点の移動を観測した時に利用した星でもあります。
スピカは別名「麦の穂」として、古代ギリシャ時代にも呼ばれてきました。時期的には春小麦の収穫時期にスピカが南の空に輝いていました。
ところで麦の穂を見たことがあるでしょうか?麦の穂はツンツンとしていて、尖っているのです。ですから「刺々しいモノ」という意味があります。

麦の穂(メクネス近郊、モロッコ)

麦の穂(メクネス近郊、モロッコ)

ですからこの意味が転じてスパイクという英語が存在します。野球などのアレですね。現代ギリシャ語で「スピカ」というと大型の蜂を指しています。意味的には刺されると痛いのだから同じですね。日本では春霞の季節だったりしますので、刺々しいどころか、まったりとした輝きです。
スピカが麦の穂を示すことから、農耕の女神デメテルと思い浮かべたいのですが、ド〜モこの女神とスピカ星への結びつきは保留にした方が良さそうです。同様にデメテル女神の娘ペルセポネをおとめ座として観るのも止めた方が良いです。

麦の穂を持つデメテル女神(アテネ考古学博物館)

麦の穂を持つデメテル女神(アテネ考古学博物館)

麦の穂を持つデメテル女神の画像は多数見られますが、これらは秘儀の世界を想定していてエレウシスの秘儀に関係しています。この秘儀は秋に行われたのでスピカは秋の夜空に輝いていないのです。そうなるとデメテル女神とスピカの関係は不成立となり、別の星に注目していたことになります。

エレウシス遺跡(ギリシャ)

エレウシス遺跡(ギリシャ)

星座物語ではおとめ座は、イカリオス村長の娘エリゴネとされています。舞台はギリシャのマラトン平野に近いオイカリア村(現在のディオニソス村)での話となります。ディオニュソスがアッティカ入りしてワインの効能を村長イカリオスに伝えるのですが、不幸なことにワインの効能を毒と勘違いした村民によって、村長とその娘エリゴネは殺されてしまうという話です。あまりパッとしない物語なのですが、地中海世界ではこのモチーフのモザイクや壺絵が大量に存在します。

オイカリア遺跡(ギリシャ)

オイカリア遺跡(ギリシャ)

ディオニュソス、エリゴネ、イカリオス(カタ・パフォス遺跡、キプロス)

ディオニュソス、アクメー(エリゴネ)、イカリオス(カタ・パフォス遺跡、キプロス)

遡ってメソポタミアのシュメル時代には、スピカは「(田んぼの)畔」と呼ばれていました。またてんびん座とおとめ座の一部の星域を「天秤」と呼んでいました。現代のてんびん座に当たる星域は、古代では「サソリの爪」座に相当していました。この星域は二重星座として存在していたようです。黄道星座はこの流れの中で、ヘレニズム時代までは「さそり座」「サソリの爪」「おとめ座」と続いていました。カエサルによって、サソリの爪座が削られ「てんびん座」が復活したことになります。
この辺りの話は古代の出土品からも確認できます。
以下、追ってみましょう。。。

・12星座のレリーフ

多乳のアルテミス女神像、エフェソス考古学博物館(トルコ)

多乳のアルテミス女神像、エフェソス考古学博物館(トルコ)

エフェソス考古学博物館にある有名な「多乳のアルテミス女神像」、この紀元後2世紀の作品が面白いです。この時代は星座物語が流行しました。ハドリアヌス帝自身が占星術に凝っていたことは有名な話です。
よく見るとアルテミス女神像の首元に黄道12星座が彫られています。しかもおとめ座、天秤を持つ男性像?さそり座が確認できます。天秤を持つというと運命の女神テューケーを思い浮かべるのですが、どうみても男性像ですね。黄道星座が彫られたアルテミス女神像はこの博物館で何体か確認でき、紀元後2世紀の作と推定されています。

・アンティキティラ島沖で引き上げられた天文計算機
色々と論議されている古代の計算機です。1994年にギリシャ語で出版された初版本では、紀元前83年頃ロードスからローマに運ばれる途中で船が難破したとされていました。天文学者ヒッパルコスがアレキサンドリア図書館での内紛によってロードスに移ったのが紀元前146年。その後も天文学者ゲミノス(BC110年頃)がこの地で活躍しているので時代的には合致します。他にもアレキサンドリアで活躍したティモカリス(BC320-BC260年)が星表を制作しているので、この頃の制作としてみる向きもあります。

アポロン神殿(ロードス、ギリシャ)

アポロン神殿(ロードス、ギリシャ)

ヒッパルコス(BC190頃-BC120頃)(webより引用)

ヒッパルコス(BC190頃-BC120頃)(webより引用)

アレキサンドリア図書館(セラピオン地下にある図書館別館)(エジプト)

アレキサンドリア図書館(セラピオン地下にある図書館別館)(エジプト)

確実にわかっていることを紹介しましょう。
画像から幸運なことに「サソリの爪座」を意味する「ΧΗΛΑΙ(古:へライ、現:ヒレ)」と見受けられ、語尾変化から複数形であることがわかり、サソリの両腕からハサミまでを指していることになります。現代ギリシャ語でも「ヒリ(単数主格)」と読み、「爪やハサミ」を意味しています。メモリ上に書かれた小さなギリシャ文字は、その季節における星の出没を記した脚注みたいな記述がこの天文計算機の表面に見られます。例えば◯月○日、□□の時、〇〇座が沈む時、△△座が現れる、といった具合に季節やその晩の夜の長さを知る役目がありました。星の出没の記録は現代では見向きもしないことですが、古代人には大切な現象でした。「さそり座が現れるとオリオンが西の地平線に沈んでいく」という表現が有名ですね。

天文計算機、アテネ考古学博物館(ギリシャ)

天文計算機、アテネ考古学博物館(ギリシャ)

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このような感じで、長年暮らした地中海世界の星空と歴史や考古学を辿りながら星空の話を展開したいと考えています。ドイツは考古学の先進国ですから多少の緊張はあります。
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写真家(日本写真家協会会員、日本舞台写真家協会会員) 私は長年、地中海世界で星空を眺め、星空を撮影してきました。 暑く乾燥した世界の天と地の間で、オリオン座を意味する古代の紋章を探し続けていました。訪れた遺跡は260遺跡を超え、様々な星空を語ることが出来ます。月々の星空を紹介しながら古代へとタイムスリップの旅に誘うページとご理解ください。著書に単行本「ギリシャ星座周遊記」(地人書簡)、写真集「星空」(日本カメラ社)など。

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カテゴリー: ドイツの暮らし

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